発売から25年を経て、その内容は全く色褪せないと感じながら、この作品が描かれた当時の時代状況を知らない世代、または忘れてしまっている人が読んだらどんな感想になるんだろう?という気持ちも(純粋な興味と同時に)存在します。
状況や経緯を一番細かく追えるのは、SAPIO(休刊)で連載されていた初期の「新・ゴーマニズム宣言」単行本なのですが、これも時代状況と同時進行で四半世紀前に連載されていた内容、かつ何冊にも渡るので、ちょっとハードルの高さを感じる人もいるかと思います。
そこで個人的にオススメなのが、ちょっとマニアック(失礼!)ですが、2012年に刊行された「ニセモノ政治家の見分け方 ゴーマニズム宣言RISING」です。
これはタイトル通り、現在も続いている「ライジング」のテキスト原稿と、描き下ろしを含む6本の漫画で構成された一冊。中でも注目は、冒頭に収録された描き下ろし「右傾化の原点 慰安婦問題、アゲイン!」です。
同作中では、初めて慰安婦問題を描いた1996年から、様々な論争や教科書運動、戦争論の執筆に至る、当時の状況や思想の流れなどが、ずっとリアルタイムで読み続けて来た者の目で見ても、かなり克明かつわかりやすく描かれています。
慰安婦問題についてさらに掘り下げて知りたくなった方は、2020年刊行の「慰安婦」(先述の「新・ゴーマニズム宣言」からの収録も多い)を併せて読むことで、かなりカバーすることができます。
「ニセモノ政治家の見分け方」に話を戻すと、全体として時事的なテーマも多く、ちょうど発売から11年ほどなので、当時から現在までの社会で何が変わり、何が変わっていないのかを反芻するのにも向いています。
文化的イベントや活動のピークは「秋」に来ることが多いですが、真夏は、それに向けた「助走期間」としても、一年でもっとも読書に向いている季節ではないかと個人的に思っています。
皆さん、ぜひ新たな気付きや「思想の糧」との良き出会いがありますよう!